Swizerland Day53

4時45分にIsabelのアラームで起きた。外はまだ暗い。貸してもらった服はぶかぶかだったが、ベルトがあったのでなんとか。チーズ職人の服は上から下まで真っ白である。たた、2人の着ている白Tの裏のロゴがヤギのデザインで、なかなか素敵だった。

 


長靴も借り、いざチーズ工房へ。まず、昨日から仕込んであるAlp cheeseやムッツィリを型から抜いてを台に上げ、塩水のバスタブに漬ける。型や槽の洗浄、消毒。スピーカーが置いてあり、音楽をかけながら。音楽やラジオは欠かせません。ここの工房はチーズだけでなく、発酵バター、色んなフレーバーのヨーグルト8種くらい、ホエードリンクなども作っている。

 


そうこうしているうちにIsabelが複雑に入り組んだパイプの操作を始め、アルプからバルクに送られてくるミルクのパスチャライズ(殺菌)を始めた。色んな殺菌方法があるが、68度以下で数十秒の低温殺菌。前のデンマークのチーズ工房Ostrich Hingeは生乳(殺菌していない生の牛乳)を使っていた。もちろんその方がもともと乳に含まれるバクテリアや乳酸菌が死んでいないので、熟成させた時に味わい深くなるわけだが、菌のコントロールがなかなか難しい。特別フレッシュな、クリーンな生乳が求められる。日本では殺菌していない飲用の乳を販売することは違反(北海道中札内村のおもいやり牛乳を除き)だが、乳加工品については調べてみないとわからない。さらに、牛に食べさせるサイレージも使えないもしくは、チーズを作る2週間前からやめた方がいいという。だから多くのチーズに使われる乳は、殺菌して、一度まっさらなキャンバスにしてから、それぞれ菌会社が販売しているカルチャー(乳加工用の乳酸菌、日本で言えば麹屋みたいな)を加えて作る。

 


さらにこの機械はクリームと乳部分に分けてくれる。脂肪球の大きさによって、上澄み部分にはクリームが浮くが、この部分を発酵バターに使う。ブラウンスイスはタンパク質が高いと言われるが実はそうでもなく、ジャージーの方が乳脂肪も乳タンパクも全てにおいて数値は上である。ただ、乳脂肪が多いとチーズが柔らかくなったり、変質しやすい。

 


パスチャライザーからでできた乳は34℃ほど。先に小さい方の槽(400L)にミルクを貯め、次に銅槽(3000L)に。乳量は草量によるので、今はピーク時より下がりつつあり3000Lも貯まらないらしい。ムッツィリとAlp cheeseを同時進行で作っていくが、常に1℃、Alpの方が温度を高く保っていた。この差が、発酵と熟成に影響を及ぼし、原料は同じだが違う味になる。カルチャーは同じものを使っていて、販売されている高温殺菌の牛乳パックを温めて培養していた。カルチャーを加えて40分発酵させて、レンネットを加えてさらに40分待つ。この間に朝ごはんタイムになった。

 


時刻は8時頃。カッティングのスタート。カッティングしながら混ぜてより細かくカードを作る。あれ、アメリカのおじさんが作ってたチェダーはこんなに細かくしてなかった気が…。その後ホエーを抜いて、熱湯を入れて再びホエーを抜いてから、ホースを繋いで網目のはった型にカードを流し込む。Alpの方は型に入れずにそのまま水槽にカードを流し込み、45kgのプレス機で圧をかけ、豆腐みたいなカードになってから切り分けて型に入れる。反転しながら、ぽたぽたとホエーを抜いていって、明日塩水につける。という感じ。ここまでやって、ヨーグルトのパッキングを手伝うことになった。フレーバーのシロップを混ぜたり、消費期限をスタンプしたり、シールを貼ったり。ブルーベリーやチョコレートを作った。

 


途中、昼休憩(作ってもらったチーズリゾットがとろけるほど美味しかった)やコーヒーブレイク(作りたてのホエーを飲んだが乳糖の甘さがある)を挟み、14時ごろに作業は終わった。天気予報は雨だったのに、晴れ間が差し込んでいたので、Isabelがアルプに牛を見に行く?と誘ってくれた。もちろんYES。

 


着替えてからIsabelとRobinと私の3人で彼女の車に乗る。二人乗りだと思っていた車は4人乗車でき、しかもオープンカーに変身するという…。人生で初めて乗ったよ、しかもアルプスで。超急な坂道もローギアでなんとか登ったり、スイス一の滝(名前忘れた)が枯渇しているのを横目にしながら、アルプの放牧場へ到着。放牧期間は3ヶ月弱。150頭の牛と120頭のヤギが放されていて、私たちが到着した時は丁度集牧する時間だった。パーラーは全部持ち運びできるか組み立て式で、時期の終わりにには建物だけ残し全て下山させる。集牧を一通り見た後、天気が悪くなり始めたので帰ることに。しかし見れただけ良かった。

 


工房に戻ってくると、もうバスの時間が近かった。Robinがお土産に、沢山のチーズやヨーグルト、バターを持たせてくれた。Isabelにバス停まで送ってもらい、拙い英語でお礼を言って。バスに乗って山を下った。途中から雷と土砂降りになり、バスの接続や電車が遅れて、ダイヤぎりぎりで動いている私は乗り遅れるのではないかとヒヤヒヤしたが、なんとかいつも間に合った。

 


19時ごろにAmlikonに帰ってきた。1泊2日だったものの、なんだか大冒険したように感じ、手土産のチーズを渡して感想を話したりして寝た。

 

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