Swizerland Day52

また1匹のハエのせいでよく眠れなかった。Danielaと一緒にチョコチップ入りのヨーグルトを食べ、冬に薪となる木を一輪車に積む作業をしてからコーヒーブレイク。昨日の夜Hanzが帰ってきたので、今日はPatricに翻訳してもらいながらスイス農業について少し教えてもらった。

 


牛乳はdemterで0.95CHF/kg。コンベンショナルは半額くらい。そして餌代や機械の減価償却などのコストは1.17CHF/kg。え、この時点で赤字じゃん。ところが政府からの補助金が年間750,000CHF出るらしい。この値は農家によって異なり、とっても細かい基準があるようで、除角しなかったり、放牧していたり、麦ストローのベッドを使っていたり、より伝統的な感じであればあるほどプラスされる。この補助金は畜産だけで農産はないらしい。つまりは酪農をしていれば乳価などは赤字であってもやっていけるということ。Patricが言った一言で全て説明される。「もし政府からの補助金がなければ酪農という産業は消えるし、そうでなかったとしても大規模化、機械化しているだろう。」スイスの景観は守れないということだ。スイスにとって酪農は牛乳生産がメインではなくなって、景観の維持や観光業に直結しているため、そっちの方が大事なのかもしれない。もともと人口は多くないし、乳製品の自給率は高い。スイスの小さな酪農はとても憧れるが、同じような経営はできない。小さくても黒になっていくように工夫しなくては日本では食っていけないと痛切に感じた。

 


また、チーズは、特にエメンタールのようなバクテリアが作る二酸化炭素でいっぱい穴が開くやつは、サイレージが使えないとも。パスチャライズしていない生乳を使うにはサイレージは使えないし、サイレージを使いたいならパスチャライズする必要がある。うーん、日本では乾草を作るのはとても難しい。かといって輸入乾草を使ってまでチーズを作るというのも、違う気がする。課題がいっぱいである。

 


と、ここまで話したところでHanz(麦わら帽子をかぶるとハイジのおんじそのもの。)と男性陣はストローロールを運びに出かけて行ったので、マザーと昨日運んだストローでベッドメイキング。明日が雨らしく、少し湿度が高いので少し作業しただけで汗をかく。途中、パプリカンというメイドインスイスのポテチを食べて休憩した。昼前には牛たちを放牧から呼び戻し、給餌させた。

 


そして午後からアルプのチーズ工房に出かけるので、急いでシャワーを浴び支度して、Monicaが作ってくれたチーズとソーセージとチャイブのサラダを食べ、マザーにお土産と言伝てを承り、バスに乗っていざWeisstannenへ。

 


村に近づくなり土砂降りになってしまい、バスを降りるなり屋根付きのバス停に避難。と、Danielaのお姉さんAnaの友達のイザベルがちょうどいいタイミングで迎えにきてくれた。

 


車で5分ほどでバス停から4キロほど離れた、アルプに建つチーズ工房兼レストラン兼宿泊といったなんともかわった施設があった。Alp Sizeというチーズ工房だ。Danielaの姉のAnaの親友IsabelとRobinが私が訪れることを快く迎えてくれた。Isabelは英語はそんなになので、Robinが結構話してくれた。ここは6月中旬から9月中旬の、ほんの3ヶ月しかチーズを作っておらず、本当にシーズン限定のチーズ。注文も殺到していて、毎日朝の5時からチーズを作っているという。そして何よりも驚くことは、この工房にあるバルククーラーから4kmのパイプがアルプの上に伸びており、ここを通って、アルプの牛たちの乳が運ばれてくる仕組みである。チーズは、牛乳でハード系2種、白カビ1種、ハロウミみたいなパニールみたいなチーズ1種、ヤギ乳でハードと白カビ1種類ずつ作っており、通常はIsabelとRobin2人で作るそうだ。私が到着したのは夕方の16時頃だったので、もう作る作業はほぼ終わっており、Robinが説明しながら施設を見せてくれた。

 


メインのAlp cheeseは銅鍋で作る。分厚い金属の中には湯煎のようにお湯と水で温度を保つようになっている。銅を使うのは熱伝導率がいいから。レストランからはチーズ工房が観れるようになっており、建物の作りもなかなか楽しい。外にはロバを2頭飼っていた。チーズセラーも見せてもらったが、ロゴが目を惹くし、匂いも乳が香ばしくなったようなやさしくなったような独特の香りが漂う。Alp cheeseは45日と9ヶ月のショートかロングの熟成で出荷、ムッツィリと呼ばれる、自重のみでホエーを排出するのは30日からの出荷であった。ムッツィリはペッパーやベアと呼ばれるギョウジャニンニクのようなスパイスを混ぜたのが人気らしい。

 


一通り見せてもらった後、全然関係ない話もRobinとしながら夕ご飯をご馳走になり(チーズもふんだんに)、明日の準備で器具の洗浄や炉の準備(熱源は薪)、タンパク質でできた食べられるラベル貼りをした。夜になると山の上は一枚パーカーを羽織らなければ寒かった。標高1200mくらいらしいが。

 


Isabelが明日の作業着にと彼女の服を貸してくれた。ベルトがアッペンツェル伝統の牛と男性のロゴがついたやつで可愛かった。2人と、もう1人売店担当の女性がログハウスの二階で夏の間暮らしており、私なぞの者がふらっと立ち寄っても泊まりたいといっても、充分なベット数があった。明日は5時からチーズを作り始めるらしいので、21時半頃イザベルの部屋にて就寝。山小屋の夜は静寂で、心地よい気温で、あっという間に眠りにつけた。

 

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