Denmark Day26

英語では乳牛たちのことをsheというので好きだ。日本語では彼女たちは、とはあまり言わない。本日も朝から彼女たちを集牧して搾乳である。頭数が少なく、一見簡単に見えてもよく考えられた搾乳だと思う。足をあげるやつは1頭しかいないし、ミルカーが6個しかないので、渋い子がいる反対側のパーラーは5頭にする等、牛たちの協力のもと、極力スムーズに行くようにできている。

 


体細胞が多い牛は何頭かいるが、乳房炎はいない。もし病気になったらどうするのか。オーガニックだから薬が使えないのでは…?と思っていたがそうではないらしい。薬で治るものは、獣医師と相談のもと、倍以上の休薬期間を設け、また年に3回という使用制限もあるが、全く使っていけないわけではない。ホルモン剤は使えないので、ETはできない。また粉ミルクも(今はあるかもしれないとフレデリックは言っていた)オーガニックを始めた当時は使えなかった。草も、もちろん除草剤や殺虫剤はダメなので、年に一度春に撒くコンポストで栄養を支える。また数年に一度は穀類と草、放牧地を輪作し、Nが足りないところではルーピンを作付けするなどしている。土壌診断は年に一度。13haそれ以上で200個のロールサイレージを作り、冬の半年間で消費する。デントコーンや草作りはコントラクターに依頼して、機械類を極力持たないようにしている。親牛には1日3から4.5kgの濃厚飼料を与えている。乳脂肪率は平均6%を超え、冬時期は8%になることも。乳蛋白も4%以上を維持。乳量は出ないと言っても、乳脂肪率で換算すると30kg近く泌乳していることになる。デンマークではMS換算で乳価が決まるので、乳量を追う必要はない。子牛たちは目がプリプリで生き生きしているし、よくなつき、ハンドリングも簡単である。判別精液は使えるので後継牛はコントロール。ストローは70DKK〜くらい。…とざっと概要を書いてみた。文にすれば淡々としているが、実際にここまで持ってくるのは凄いことだ。

 


帰るといい匂いがして、Kristenが小麦の方のパンを焼いていた。今日はまだ8時をまわったばかりで、はやく終わったみたい。まだ焼けてないわ!と彼女は慌てていた。いつもどおりコーヒーブレイクをしていると、2人からプレゼントをもらった!えぇぇー。ありがとう!洋スタイルでその場で開けてみる。ThiseのキャップとLEGOのローダーと一輪車笑。これ飾ってたらめっちゃ仕事好きみたいだな、と思いつつありがたく受け取った。話していると、来年の春に牧場を若い夫婦に譲り、リタイアするらしい。今シーズンが最後のwwoofホストだったみたい。フレデリックは70歳。40代半ばで牧場を買い取ってスタートし、22年間もスタイルを崩さぬままずっと貫き通して、ほんと凄いよ。Kristenは明日も仕事で、みんなで食事するのはこれが最後だからと言った。

 


彼女は仕事に出かけ、私たちは新しい放牧地に電牧の設置と、サイレージを守るためのバリアをつくった。ねじねじで地面に穴を作り、木の杭を打ち込んで電牧を張った。

 


お昼はKristenが作ってくれたパスタと野菜トマトソース。メープルツリーの木の下で。食事はほぼ外で食べた。というかもう1週間経つのか…。早すぎるなぁ。明日はイヴが紹介してくれて、実はフレデリックとも知り合いだったというオーガニックチーズ農家さんのもとへ、7月2日までお世話になる予定。wwoofでもなんでもなく、本当に現地の人のつてで行くという、この旅感。素晴らしい。昨日の夜にKristenが行き方を調べてくれた。本当は電車でぶらぶらしながらスカンジナビア半島へ渡り、ヘルシンキを目指す予定だったのだが、それはお釈迦になり、逆に時間が無くなってしまい、アイスランドへ飛ぶ飛行機に間に合うため、急遽コペンハーゲンから飛行機で向かうこととした。全てが計画通り上手く行くわけではないが、いい選択肢をしていると思う。

 


午後の休憩を取った後、手押し草刈機でエントランス、通路、庭の草刈り。西洋の庭は青い芝をキープしなければならない。景観を守るためには、草刈りを怠ってはいけないのだ。特にこの家の庭は立派なのであった。

 


ちょうど終わったところでいい時間だったので、今日は私が紅茶を入れ、ティータイムの準備をした。昼に気温が暑くて溶けてしまったブルーチーズの最後の一欠片を食べる。これ、本当に美味しかったなぁ。私、ブルーはそんなに得意じゃないが、デンマークに来てゴートチーズであれブルーであれ、本当に全然違うのである。これは、スイスでもいっぱい試食せねば…。

 


集牧に行くと、彼女たちは真新しい牧草を食べるのに必死で、全然行こうとはせず難儀した。子牛は昨日の除角が嘘のようにピンピンしており、人間不信にもなっていなかった。

 


夕方の作業を終え、昨日の残りの肉じゃがや昼のパスタをフレデリックと2人で食べる。彼が明日からお世話になる酪農家のもとへ電話してくれた。その後、彼ら夫婦のiPadに入っている写真を見せてくれた。冬の雪が積もった時の写真や、クリスマス、孫や娘の写真、はたまた40年前の結婚式の写真など、とてもいいおじいちゃんとおばあちゃんであり、そういう部分は日本の家庭と何も変わらないのだな、と思った。また所々、家を改築する写真があって尋ねると、彼が直したものや作ったものが沢山…!この家の風呂も棚もガラスハウスも、パーラーでさえフレデリックがリフォーム、増築したものだという。凄え!大工さんと何も変わらないじゃん!とあれこれ話が盛り上がっところでKristenが帰ってきた。2人を撮った写真を送ってあげた。デンマークは今日、政権が変わるみたいでテレビを見るそうなので、私は撤退した。

 


眠れなかったので溜まった日記を書くことにしたが、寝不足だぞ、これは。

 

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