Denmark Day31

朝6時半、チーズ工房へ行く。入ると私の名前が書かれた紙が置いてあり、白い作業着に着替えた。消毒槽を通り抜けた後は、工房の中に大きなバルククーラーがあり、さっき絞った生乳がそのまま工房の方へ来る仕組みとなっていた。500Lの槽が2つあり、すでに片方はレンネットを入れて今まさにカッティングするところであった。チーズは熟成度の違いや水分量なども含め7、8種類を常に作っており、週4回作る。ファミリエは2人。今日はハード系を作るらしい。私は本当に手伝える事もないので、見て疑問点をどんどん質問した。生産されたチーズは自分のショップが2割、8割はNatural milkというオーガニックの乳業会社に流通を任せている。パスチャライズせず、生乳からそのままチーズを作っているところは、デンマークで2件しかないらしい。より、フレーバーに、また生産から消費者に買われるまで一貫して行いたかったEvaldのマインドのもと、チーズ工房は始まった。

 


乳酸菌の投入、レンネット投入、カッティング、ホエーの流出、プレッシングして水分を抜く、型詰…の工程を見た。また発酵バターの仕込みも。ホエーは捨てないでTMRの水分として混ぜるそうだ。また子牛に飲ませてもいい。乳糖やその他の栄養はまだ残っているので、とてもいいと思ったし、嗜好性も悪くないらしい。

 


チーズは世話の焼ける子たちである。ちゃんと面倒見てあげないと、変なカビが生えたり、腐敗したり、発酵が進まなかったり。特に殺菌していない牛乳を使うならなおさらで、これはフレッシュじゃなく、ハードでないと認証を取るのが難しかったようだ。日本の特別牛乳のように、食品安全の機関が年に何回も調査に来る。チーズまで作るのに、実に様々なことを考えなくてはならない。季節によって乳脂肪、乳タンパクの含有量は変化するし、湿度、気温も違う。少しでも質が低いミルクはちゃんとしたものにならない。バクテリアやファンギが作った有機質の土から牧草、ルーメン細菌、牛、ミルク、チーズ…実に多くの過程や生物の手を借りてチーズはできる。

 


ショップの中も見学し、農家である絵本作家が描いた絵本や、オーガニックのお菓子、石鹸、Ereneの母が作ったニットの靴下や赤ちゃん用の帽子が売られていた。牛の置物やバケット缶も置いてあり、オープンの日はお客さんが自由に牛乳を飲めるようになっている。

 


昼過ぎにチーズを作る作業は終了し、15時からの搾乳に備えて休憩した。

 


今日はここで働いている日本人女性の方とそのご両親が来られるそうで、さらに知り合いの農家が集まるそうで、ちょっとしたプチパーティーが19時から催される。ので少し早めに搾乳開始。初日よりだいぶスムーズになったかな。けど私は搾乳早い方じゃないし、早くやるのも好きではない。無心がベストである。蹴られても落とされても、あーあー、くらいに構えてた方が楽だもの。

 


パーラーを洗い始める頃、Evaldが作業を代わってくれ、一足先にシャワーを浴び、パーティーの準備をほんの少し手伝い、人々が集うのを待った。Evaldの家族や知り合いの農家、日本人のご家族合わせ14人ほど。押し寿しやお好み焼きが並び、まさかデンマーク日本食を食べるとは…。つくづくラッキーである。デンマークは日本人の人、少ないと思っていたが今回2人もの素敵な女性に会えて縁があったなぁと思った。彼女のご両親と話したり、WAGYUを育てている75歳のおじいさん農家と白熱教室した。最初はシャロレーにオランダ経由の和牛精液を合わせ、F1にまたかけての繰り返し。75%以上和牛の血であれば、クリーンであると言える。今ではVikingで販売されでいるWAGYUストローを使い、4頭のクリーン和牛がいるという。この方の牧場でも先駆けて日本人女性がワーカーとして働いていたらしい。いろんな場所に、色々な人がいて驚くばかりである。

 


デザートに手作りのアイスなどを頂き、10時をまわった頃、皆んな帰り始め、彼女もご両親と帰り、Ereneもベッドへ行ったため、Evaldと二人で話すことに。人生の時間は思ったより短く、やりたいことをやらなくてはいけない。そしていつもポジティブに。農家を始めるのには急がなくていい。色んな場所に行き、色んな人に出会い、多くの経験を積んでからでも遅くない。それが糧になっていくから。そして始めたからには、自分の芯を通して、反対する者は沢山いる、時間もかかる。でも辛抱強く待っていればいつか世間が追いついてくる。今日を少しだけ頑張ったら、明日はほんの少しだけ良くなる。それを積み重ねればいいんだ。こんな内容だったと思う。彼やフレデリックはパイオニアだった。今オーガニック先進国となったデンマークの始まりは彼らだった。彼らは需要を満たすだけの生産力を身につけた上で、一周回って、持続可能なやり方に切り替えつつある。日本は、もしこれから農業者を増やして行くとしたら、そしてその人たちが初めから持続可能を意識するとしたら、より早く、同じ土俵に立てるのではないか?少ない自給率の中、安心安全made in Japanを語るのなら、早くそれを実行しなくては。と、思った。

 

日付が変わった頃、就寝。日記を書いていたが寝落ちしてしまったみたい。

 

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